サワイ製剤研究、Azure OpenAI RAGで知識継承
元記事公開日: 2026年7月28日
出典: https://ai-keiei.shift-ai.co.jp/interview-f6-sawai/
サワイグループは全社員向けGeminiと、製剤研究部のAzure OpenAI上RAGを2階建てで運用する。過去の検討報告書などを参照し、硬度向上などの手法を多角的に提示する。情報収集は従来1〜4時間から約15分になり、部員の80%以上が日常利用している。
背景
サワイグループは沢井製薬などジェネリック医薬品事業を抱え、約700品目の製品を支える製剤研究のノウハウが現場に蓄積されている。一方、機密性の高い医薬品情報を扱うため、生成AIへの入力による情報漏えいが大きなリスクとなる。2023年の社内有志の動きをきっかけに生成AI活用が始まり、禁止ではなく注意喚起から着手した。製剤研究では過去資料の手作業探索や工場ヒアリングに1時間から多いとき4時間を要していた。
要望・目的
守りを固めつつ生成AIの可能性を潰さないことが活動の出発点だった。業務に近い使い方への社内ニーズが高まり、安心して使える全社基盤と、現場向けの高度活用の両立が求められた。製剤研究部では、経験の浅い若手や他部署からの異動者がAIで製剤知識を補い、ベテラン研究者に近い多角的視点で一段階上の研究を行える状態にしたいという意図があった。
実装・実施内容
2025年4月、採用中のGoogle環境を活かしクローズドな生成AI基盤としてGeminiを全社展開した。ガイドラインは自治体等の先行例を参考に、製薬企業のセキュリティ・倫理を加味して独自策定した。製剤研究部はAzure OpenAI上に過去の検討報告書など社内データを参照するRAGを構築し、2024年6月頃から検証利用を開始した。回答下に参考文献リンクを付け根拠を即確認できるようにし、人が事実確認する手順をマニュアルとシステム要件に組み込んだ。月例説明会や講習会、満足度アンケート、問い合わせ窓口などで浸透を進めた。
AIサービス・システム
全社共通はGeminiを土台とし、その上に業務特化型LLMを重ねる2階建てで運用する。製剤研究部のRAGは社内データを検索拡張生成し、例えば製剤の硬度を上げたい課題に対し過去品目の事例から手法を多角的に提示する。回答のヒントや資料の該当箇所を示し、参考文献をワンクリックでプレビューできる。AIは基礎検討段階の提案材料であり、国への申請には生成AIが分析したデータを使わない。ブランドコミュニケーション部ではGeminiやNotebookLMも用いる。
結果・効果
製剤研究の情報収集はわずか15分ほどで特定できるようになり、生まれた時間は製剤研究や創造的アプローチなど人間領域に充てられる。研究の試行錯誤サイクルが加速し、実験データの品質向上にもつながっている。製剤研究部のRAGは部員の80%以上が日常利用し、月50回ほどのペースで定着。全社Geminiの利用率は70〜80%に達する。成熟度は自社定義のPhase2からPhase3への移行期で、製剤研究の成功事例を全社へ広げる段階にある。