AI検索で自社がどう答えられるかを複数AIで定点観測し、改善して再測定する手順
参照したAIgram
目次
- 概要:AI検索での自社の見え方は、複数AIで条件を揃えて定点観測し、改善後に同一指標で再測定する
- AI検索の回答は変動するため、一度の確認では自社の見え方を把握できない
- 観測は単一のAIでは足りず、複数AIを横断して同じ条件で見る必要がある
- 手順の起点は、対象AIの選定と、聞き方を先に決めること
- 次に回答データを継続取得し、正誤判定と優先度判断を分けて分析する
- 検知だけでは変わらないため、参照元の特定から改善施策の実行までを行う
- 改善後は同一指標で再測定し、施策前後の変化を確認して次の打ち手につなげる
- 測定条件を揃えないと、施策の効果か元々の条件かを切り分けられない
- 結論:条件を決めて複数AIを定点観測し、改善を実行して同じ見方で再確認する
概要:AI検索での自社の見え方は、複数AIで条件を揃えて定点観測し、改善後に同一指標で再測定する
「ChatGPTに自社のことを聞いてみたら、名前が出てこなかった」「間違った説明をされていた」。一度試して驚いた、という方は多いと思います。ただ、その一度の結果だけでは、自社が今どう答えられているのかは分かりません。
実際の事例を見ると、共通しているのは一度の確認で終わらせず、条件を決めて繰り返し測ることです。
- 株式会社エコテックは、自社グループの商材「エコプロコート」に特許出願中の技術でAIO対策を施し、ログインも履歴もない状態のChatGPT・Gemini・Claudeの回答内で引用を確認しました(2026年7月20日 当社計測)。AIの回答は変動し毎回引用されるとは限らないため、定点観測で継続確認しています エコテックAIO対策で3AI引用を確認。
- ナイル株式会社の「AIブランドプロテクト」は、自社開発のモニタリングツールでChatGPT・Gemini・Googleの「AIによる概要(AI Overviews)」・AIモードの表示状況を定期的に検知します。初期診断で現状を把握した後、月次で変化を追いながら改善施策を進め、施策後の回答変化まで確認します ナイルAIブランドプロテクトの誤情報検知と改善支援。
- 株式会社電通デジタルは「Adobe LLM Optimizer」を計測・可視化の基盤として、①プロンプト・キーワードの設計、②複数LLM横断でのトラッキングと競合との差分分析、③施策設計と実行、④施策前後のスコア変化を同一指標で計測する継続モニタリングとPDCA、という4ステップで展開します Adobe LLM OptimizerでGEO支援。
対象AIと聞き方を決める、回答データを継続取得して分析する、参照元を特定して改善施策を実行する、同一指標で再測定する。この流れが3事例に共通しています。
AI検索の回答は変動するため、一度の確認では自社の見え方を把握できない
まず押さえておきたいのは、AIの回答が毎回同じにはならないという点です。
エコテックは、ChatGPT・Gemini・Claudeの3つで自社商材の引用を確認できたと発表していますが、そこに「AIの回答は変動し、毎回引用されるとは限らないため、定点観測で継続確認しています」と明記しています 。引用を確認できた側の企業が、その確認を一回限りの成果として扱っていない、という点が参考になります。
そして、この変動が放置しにくい理由もあります。ナイルは、ChatGPTやGemini、Perplexityといった生成AIが情報取得の主要チャネルとして定着し、Googleも「AIによる概要」やAIモードを検索結果に統合したことで、利用者が検索結果だけでなく「AIの回答」も信頼して行動するようになったとしています。その結果、企業にはこれまで想定していなかった新しいブランドリスクが生まれているという指摘です 。
回答が変動するなら、一度の確認は「その時点でこう答えられた」という記録にすぎません。定点観測が前提になります。
観測は単一のAIでは足りず、複数AIを横断して同じ条件で見る必要がある
次に決めるのは、どのAIを見るかです。
ナイルは、こうしたリスクは単一のAIを見るだけでは把握できず、複数のAIを横断して定点観測し、問題の参照元サイトを特定した上で改善まで行う必要があるとしています 。エコテックの確認も、ChatGPT・Gemini・Claudeという3つのAIに対して、ログインも履歴もない"まっさら"な状態で行われました 。電通デジタルが基盤として使うAdobe LLM Optimizerも、複数の大規模言語モデルにおける自社ブランドの言及・引用状況をリアルタイムで分析し、プロンプトごとの傾向や競合との差分を可視化するものです 。
3事例はいずれも、対象を1つのAIに絞っていません。観測の設計として押さえたい点は次の通りです。
- 対象とするAIを複数選び、同じ質問を同じ条件で投げる
- ログイン状態や履歴の有無など、回答に影響する条件を揃える
- AIごとの結果を並べて比較できる形で記録する
- 自社だけでなく競合がどう言及されているかも合わせて見る
手順の起点は、対象AIの選定と、聞き方を先に決めること
観測の第一歩は、測る前の準備です。
電通デジタルのSTEP1は、分析対象とするAIツールを選定し、ターゲットとなるプロンプトおよびキーワードを設計・選定することです 。何を聞くかを決めないまま測り始めると、比較できるデータになりません。
条件の明示という点では、エコテックの計測も同じです。ログインも履歴もない状態という条件を示したうえで引用を確認しています 。ログイン済みで過去のやり取りが残っている状態と、まっさらな状態では、同じ質問でも前提が違います。どちらで測ったのかを記録しておかないと、後から比較できなくなります
。
測り始める前に、どのAIに、どんな質問を、どういう状態で聞くかを決めて書き留めておく。ここが再測定できるかどうかの分かれ目になります。
次に回答データを継続取得し、正誤判定と優先度判断を分けて分析する
条件が決まったら、実際にデータを集めて分析します。
電通デジタルのSTEP2は、Adobe LLM Optimizerを活用した複数LLM横断での推奨状況の継続トラッキングと、競合との差分分析です 。一度の取得ではなく、継続的に追う設計になっています。
分析の中身をどう組むかは、ナイルの体制が参考になります。自社開発のモニタリングツールで回答データを自動取得したうえで、AIによる1次分析で事実関係の正誤判定などを実行し、その結果をコンサルタントが2次分析して誤検知の排除や改善優先度の判断を行うという流れです 。ナイルはこれを、自動化された観測基盤と人による判断・施策設計を両立させることで、変化の早いAI環境にも柔軟に対応する体制として説明しています。
- 回答データの取得は自動化し、継続して集められる状態にする
- 事実関係が合っているかどうかの判定と、どれを優先して直すかの判断を分けて扱う
- 誤検知が混ざる前提で、人が確認する工程を残す
検知だけでは変わらないため、参照元の特定から改善施策の実行までを行う
集めて分析するだけでは、AIの回答は変わりません。
ナイルは、市場に存在するモニタリングツールの多くが「検知」にとどまるのに対し、ブランド改善の実行パートナーとなり得る点を「AIブランドプロテクト」の最大の特長としています 。検知と改善実行が別の作業だということが、この位置づけから読み取れます。
改善の打ち手は一つではありません。ナイルは、Googleへのフィードバックや参照元への修正依頼、自社コンテンツの整備など、打ち手が多岐にわたるとしています 。誤情報がどこから来ているのかを特定しないと、どの打ち手を使うべきかも決まりません。
電通デジタルのSTEP3も、施策の実行までを含みます。アーンド・シェアード・オウンドのトリプルメディアを統合したGEO施策を立案・実行するという内容です 。自社サイトの手直しだけで完結させていない点が共通しています。
観測で分かるのは現状です。回答を変えるには、参照元を特定してから、自社コンテンツの整備や参照元への修正依頼といった施策を実行する必要があります。
改善後は同一指標で再測定し、施策前後の変化を確認して次の打ち手につなげる
施策を実行したら、もう一度同じ見方で測ります。
電通デジタルのSTEP4は、施策前後のスコア変化を同一指標で計測し、次の打ち手を継続的に検討・実行することです 。前と違う指標で測ると、変化したのが自社の見え方なのか測り方なのか分からなくなります。
ナイルも同じ形をとっています。初期診断で現状を把握し、その後は月次で変化を追いながら改善施策を進め、施策後の回答変化まで確認します(スポット診断のみの対応も可能です) 。最初に現状を記録しておくからこそ、後の変化が読み取れます
。
- 施策前の状態を、後で比較できる形で記録しておく
- 再測定は、初回と同じAI・同じ質問・同じ条件・同じ指標で行う
- 変化を確認した結果を、次の施策の検討材料にする
測定条件を揃えないと、施策の効果か元々の条件かを切り分けられない
再測定で変化が出たとして、それが施策の効果だと言えるかは別の問題です。
エコテックは、この点を自社の検証について正直に書いています。エコプロコートには長年かけて積み上げてきた自社のドメインがあるため、既存ドメインで検証するとドメインの強さそのものが結果に出てしまう。それでは本当にAIO対策が効いたのか、それとも元々のドメインが強かっただけなのか切り分けられない、という指摘です 。
そこでエコテックは、その切り分けのために「AIO-LLMO.jp」という何の強さもない新しいドメインを立ち上げ、そこをAIO対策で一から育てていく過程を、連続リリースで公開する予定だとしています 。
測る側の客観性についても触れられています。エコテックは費用の判定に第三者計測ツールを用いるとしており、自社で積み上げた技術も、PeecやOtterlyといった外部の第三者ツールも、"御社に効くもの"だけを基準に選ぶと説明しています 。
結果が出たときに、それが施策によるものなのか元々の条件によるものなのかを問い直せるかどうか。ここを詰めておくと、観測の結果を次の判断に使えます。
結論:条件を決めて複数AIを定点観測し、改善を実行して同じ見方で再確認する
ここまでの3事例をまとめると、AI検索での自社の見え方を扱う手順は、次のように整理できます。
- 対象とするAIを複数選び、質問と測定条件を先に決める
- 回答データを継続取得し、正誤判定と改善優先度の判断を分けて分析する
- 参照元を特定し、自社コンテンツの整備や参照元への修正依頼などの施策を実行する
- 施策前後を同一指標で再測定し、変化を次の打ち手の検討材料にする
- 条件が揃っているかを確認し、施策の効果か元々の条件かを切り分けられる状態にする
この順序は、3事例に共通しています。電通デジタルは施策前後のスコア変化を同一指標で計測して次の打ち手を検討し 、ナイルは施策後の回答変化まで確認し 、エコテックはAIの回答が変動するため定点観測で継続確認しています 。
なお、この領域の呼び名はまだ定まっていません。エコテックは、AIO・LLMO・GEO・AEOと呼び名がいくつもあり、どれが"正解"なのかはまだ誰にも分からないため、実測で確かめにいくとしています 。
呼び名や手法が固まっていない領域だからこそ、条件を決めて自分で測った記録が判断の土台になります。まずは対象AIと質問を決めて、今の状態を記録することから始められます。