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ローカルLLMとクラウドLLMの料金比較──初期投資と電気代、サブスクと従量課金

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目次
  1. 概要
  2. 消費トークン量が損益分岐を決定する
  3. 電気代はローカル選択の障害にならない
  4. 軽い利用では初期投資を回収できない
  5. 自律稼働の水準では従量課金が主費用になる
  6. クラウド料金は月額固定と従量課金の二層構造
  7. 従量課金には利用上限と可視化の管理が付属する
  8. 既存のGPU資産は初期投資の前提を変える
  9. 機密要件は金額計算とは別の判断軸になる
  10. API価格の変動が損益分岐点を動かす
  11. 結論

概要

「自分でGPUを買ってローカルでLLMを動かすのと、クラウドのAPIやサブスクを使うのと、結局どちらが安いのだろう」と考えたことのある方は多いと思います。この問いには、消費するトークン量によって答えが変わる、という形で決着がつきます。

RAGを用いたドキュメント検索ボットの実測では、RTX 3090×2構成は稼働率30%で平均316W(1時間あたり11.0円)、RTX 5090構成は平均233W(同8.1円)でした。1日10時間動かしても電気代は約80〜110円です Llama 3.3 70BとローカルLLMの損益分岐。つまりローカル側のランニングコストは、判断を左右するほどの金額になりません。効いてくるのは初期投資と、それを何で回収するかです。

同じ事例の試算では、1日5,000トークンの軽い利用ではAPIが月約500円で回収不能、1日20万トークンではAPI月約15,000円に対し30万円機の償却が約22か月、1日300万トークン以上(月9,000万トークン)ではAPI月約200,000〜400,000円に対し電気代が月約6,000円で、30万円機の償却は約1.5か月と算出されています。

一方クラウド側は、単純な単価だけでは決まりません。Copilot Coworkの利用にはユーザー当たり月額固定のMicrosoft 365 Copilot USLが必要で、その上にCopilot Creditsによる従量課金が乗る二層構造になっています Copilot Cowork一般提供、Claude比4割安

そして金額だけが判断材料でもありません。セガはゲーム開発現場に多数あるGPU搭載PCを生かし、Ollamaなどによる共通AIサーバーで高負荷なAI処理を1カ所に集約しています セガ、Ollamaで共通AIサーバー構築し処理集約。既にハードウェアがある環境では、初期投資という前提そのものが変わります。

結論として、料金比較の答えは「どちらが安いか」ではなく「自分が月にどれだけトークンを使うか」で決まります。そのうえで、手元のGPU資産や機密要件があれば、金額とは別の理由でローカルが選ばれます。

消費トークン量が損益分岐を決定する

ローカルLLMの費用は、初期投資と電気代の2つで構成されます。事例では2つの構成で試算されています 。

  • 構成A:中古のRTX 3090(24GB)×2枚、VRAM合計48GB、システム総工費 約30万円
  • 構成B:新品のRTX 5090(32GB)、VRAM合計32GB、システム総工費 約80万円
  • 電気料金の単価は35円/kWhを採用(2026年1月時点の実効レート)

比較の相手として置かれているのは、ローカルで動かすモデルと同等性能のLlama 3.3 70B APIです。同じ規模のモデルを、自分の機械で動かすか、APIで呼ぶか。この条件を揃えたうえで、用途別のトークン量ごとに月額を比べる、という進め方をしています。

つまりこの比較は「ローカルとクラウドのどちらが優れているか」ではなく、「月に何トークン使う人にとって、どちらの支払い方が安いか」を問うものです。ここから先の章は、その試算を順に見ていきます。

Llama 3.3 70BとローカルLLMの損益分岐AI活用事例の構造図投資推論処理量比較稼働計測試算背景GPU初期費用背景大量トークン課題API利用料その他GPU専用機AI処理ローカルLLM推論利用RAG検索ボット成果電気代80〜110円結論約1.5か月で償却https://note.com/light_arnica2159/n/n9e79dec95ba2
Llama 3.3 70BとローカルLLMの損益分岐

電気代はローカル選択の障害にならない

まず、多くの人が最初に気にする電気代から確認します。事例ではワットチェッカーで壁コンセントからの実消費電力を計測しています 。

  • RTX 3090×2構成:アイドル時160W、推論ピーク時680W、実務運用(稼働率30%)の平均316W
  • RTX 5090構成:アイドル時110W、推論ピーク時520W、実務運用(稼働率30%)の平均233W

1時間あたりのコストに直すと、RTX 3090×2構成が11.0円、RTX 5090構成が8.1円です。1日10時間起動しておいても、電気代は約80〜110円にとどまります。事例では、この数字をもとに「電気代が怖いからローカルLLMを導入しない」という判断は数字の上では誤りだとしています。

LLMの推論は、モデルの学習(トレーニング)とは電力の使われ方が異なります。生成している瞬間はピークまで上がりますが、質問を受けて答えるサイクルの中では待機している時間も長く、平均すると300W前後に収まります。

電気代は、ローカルLLMを選ばない理由にはなりません。判断の対象になるのは、30万円から80万円という初期投資のほうです。

軽い利用では初期投資を回収できない

では初期投資は回収できるのか。事例の試算は、用途を3段階に分けています。まず一番軽い層から見ていきます 。

コードの書き方を質問する、メールの文面を考える、といったチャット中心の使い方では、消費量は1日5,000トークン程度です。これは3,000〜4,000文字のやりとりに相当します。この場合の月額は、クラウドAPIが約500円、ローカルの電気代が約200円(使うときだけ起動)です。

差額は月300円ほどしかありません。30万円の初期投資に対して月300円の節約では、償却期間は事実上無限大であり、事例では「回収不能」と結論づけています。この用途であれば、APIを使うか、月額20ドルのChatGPT Plusで十分だとしています。

チャット用途でGPUを買っても、金額の面では回収できません。この層に対しては、クラウド側のサブスクや従量課金がそのまま合理的な選択になります。

自律稼働の水準では従量課金が主費用になる

次に、消費量が増えた場合です。事例は中間層と最上位層の2つを試算しています 。

  • 1日20万トークン(社内ドキュメントの要約、海外記事の翻訳など):API月約15,000円、ローカル電気代月約1,500円。差額は月13,500円で、30万円機の償却は約22か月
  • 1日300万トークン以上(月9,000万トークン、エージェントの自律稼働):API月約200,000〜400,000円、ローカル電気代月約6,000円。30万円機の償却は約1.5か月、60万円機で約3か月

中間層の約22か月という数字について、事例では「2年使い続けてやっとトントン」であり、ハードウェアの陳腐化や故障のリスクを考えると強く推奨はできない、としています。判断が分かれる領域です。

一方で最上位層になると、金額の桁が変わります。AIエージェントがGitのissueを監視して修正案を作り、テストを実行し、エラーを直すまでループする。社内のやりとりを常時監視して分類する。こうした使い方では、人が入力する量とは無関係にトークンが消費され続けます。ここで従量課金は、単なる利用料ではなく、月々の固定費に近い規模の支出になります。

消費量が増えるほど、ローカル側は電気代がわずかに増えるだけで済むのに対し、クラウド側はトークン量に比例して増えます。この非対称性が、損益分岐を生んでいます。

クラウド料金は月額固定と従量課金の二層構造

ここまではAPIの単価を前提に比べてきましたが、実際の企業向けサービスでは料金の構造そのものが二層になっています。Microsoftが2026年6月16日(米国時間)に一般提供を開始したCopilot Coworkが、その例です 。

  • 利用にはユーザー当たり月額固定のMicrosoft 365 Copilot User Subscription License(USL)が必要
  • その上で、Copilot Creditsを単位とした従量課金が加わる
  • 各タスクの料金は、モデルの利用量、コンテキスト情報の取得量、ツール呼び出し回数、実行時間(ランタイム)の4要素から算出される
  • 支払いオプションは、1クレジット0.01ドルのPayGoと、事前に利用量を確約して割引を受けるP3の2種類

Microsoftはさらに、タスクを軽量(Light)、標準(Medium)、高負荷(Heavy)の3パターンに分類しています。軽量タスクは少数の情報源を参照して限定的な推論を行い、成果物は1件以下。標準タスクは複数の情報源を使って2件以上の成果物を生成。高負荷タスクは幅広い情報を集約して高度な推論を実行します。そのうえで4種類のユーザーペルソナを特定し、ペルソナごとの構成比と各タスクの利用割合を組み合わせることで、組織がコストを見積もる方式を示しています。

この見積もり方は、前章までの「1日何トークン使うか」という考え方と同じ発想です。単価だけを見ても月額は決まらず、どんな重さの仕事を、どのくらいの人が、どのくらいの頻度で回すかを積み上げる必要があります。

従量課金には利用上限と可視化の管理が付属する

従量課金は、使った分だけ払える一方で、使いすぎたときの請求額が事前に見えません。Copilot Coworkでは、この点に対応する管理機能が用意されています 。

  • Copilot Coworkは既定(デフォルト)では無効になっており、使うには管理者が有効化する
  • 管理者は、テナント、グループ、ユーザーの各レベルで利用上限と利用アラートを設定できる
  • 利用状況レポートで、ユーザー別、グループ別、機能別の利用状況を確認できる

ローカルLLMの場合、使いすぎても増えるのは電気代だけなので、上限の管理という発想があまり必要になりません。事例が「失敗が許される環境」に価値を置いているのは、この点です 。逆にクラウド側は、支出を制御する仕組みを別途用意することで、従量課金の不確実さに対応しています。

同じ「使った分だけ」でも、ローカルは電気代、クラウドは請求額が増えます。クラウドを選ぶ場合は、上限設定と利用状況の可視化をセットで運用することになります。

既存のGPU資産は初期投資の前提を変える

ここまでの試算は、GPUを新しく買うことを前提にしていました。しかし、既に手元にある場合は話が変わります。

ローカルLLMには、ある程度高性能なGPUを搭載したパソコンでなければ快適に動かない、という導入のハードルがあります。ところがセガのゲーム開発現場には、GPU搭載のパソコンが多数あります。講演では、この「ゲーム業界の特殊事情」により、ローカルLLMを利用しやすい環境が既にあったと説明されています 。

セガは、複数の内製ツールが共通で利用できる「共通AIサーバー」を、Ollamaなどを使って開発しました。内製ツールと、ローカルで動くLLMや音声認識AIとの連携を進めています。共通AIサーバーの導入により、高負荷なAI処理を1カ所に集約しつつ、ツールは軽量なまま使えるようになりました。サーバー側は常に最新の技術を適用でき、ツール側では特に意識せずにそれらの技術を使えます。

ローカルLLMは、クラウドのLLMと比べると一般に性能は劣ります。ただし課金不要で使い放題であり、セキュリティ上の懸念がないという利点があります。初期投資が既に済んでいる環境では、この「使い放題」だけが手元に残ります。

初期投資の償却という計算は、これから買う場合の話です。既にGPU搭載PCが業務用途で導入されている組織では、損益分岐点そのものが前倒しになります。

セガ、Ollamaで共通AIサーバー構築し処理集約AI活用事例の構造図環境活用要件実装機能提供導入効果利用成果背景GPU搭載PC多数要望内製ツール共通利用AI処理共通AIサーバー利用内製ツール連携成果処理集約と軽量化https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/03276/072400004/
セガ、Ollamaで共通AIサーバー構築し処理集約

機密要件は金額計算とは別の判断軸になる

もう一つ、金額の計算に入らない条件があります。扱う情報の機密性です。

共同印刷株式会社は、株式会社SI&Cと共同で、完全プライベートローカル大規模言語モデル(LLM)の共同実証実験を2025年4月より本格的に開始します 共同印刷×SI&Cの完全プライベートLLM実証。LLMの利用において外部ネットワークにいっさい接続せず、専用端末内で全処理を完結させる構成です。さまざまなファイル形式のドキュメントをナレッジとしてデータベースに格納し、社員がセキュアな状態で利活用します。

この実証実験で期待される効果として、次のような項目が挙げられています。

  • AIによる営業資料作成時間の30%削減
  • 機密情報漏洩リスクの実質ゼロ化、コンプライアンスの徹底
  • クラウドサービス利用料の大幅削減、長期的なTCO(総所有コスト)の低減
  • AIの活用により新人社員が業務を迅速に習得し主体的に成長できる環境の構築

注目したいのは、コスト削減が期待される効果の一つとして挙げられている一方で、選択の出発点はデータの秘匿性や知的財産保護にある点です。営業秘密や著作権、特許に関わる機密性の高い情報を扱う企業にとって、外部ネットワークを介さない環境でAIを活用するニーズが高まっている、という背景が示されています。

損益分岐点の試算を行った事例でも、計算に含まれない価値としてこの点が挙げられています。ローカルLLMなら、LANケーブルを抜いたスタンドアローン環境で動かせるため、情報漏洩リスクを物理的にゼロにできる、という説明です 。

社外に出せない情報を扱う場合、比較は「どちらが安いか」ではなく「クラウドが選択肢に入るかどうか」から始まります。この条件がある組織では、トークン量の試算は二次的な判断材料になります。

API価格の変動が損益分岐点を動かす

最後に、これまでの試算がどれくらいの期間有効なのかを確認しておきます。

損益分岐の試算は、2026年1月時点の電気料金単価と、当時のAPI価格を前提にしています 。この前提は動きます。実際、Anthropicは2026年7月24日からClaude Opus 5を全プラットフォームで提供し、Fable 5に迫る知能を半額のAPI価格で出しました AnthropicがClaude Opus 5を半額で公開。CursorBench 3.2では、最大思考量の設定でスコア差0.5%以内、コストは半分という結果が示されています。

サービス間の比較も同様です。MicrosoftはCopilot Coworkと、Microsoft 365コネクタを用いたAnthropicのClaude Coworkのプロンプト当たりコストを比較した社内テストで、Copilot Coworkのほうが平均30〜40%低コストになることを確認したとしています 。

API価格が下がれば、ローカル側の償却期間は長くなります。逆に消費量が増えれば短くなります。試算の数字そのものより、「自分の消費量を測り、そのときの価格で計算し直す」という手順のほうが長く使えます。

結論

ローカルLLMとクラウドLLMの料金比較について、事例から読み取れることを整理します。

  • 損益分岐を決めるのは消費トークン量です。試算では、1日5,000トークンの軽い用途はAPIが安く償却不能、1日20万トークンで約22か月、1日300万トークン以上では30万円機が約1.5か月でした
  • 電気代は判断材料になりません。RTX 3090×2構成で1時間11.0円、RTX 5090構成で8.1円、1日10時間稼働で約80〜110円です
  • クラウド側の料金は、月額固定のUSLと従量課金のクレジットが重なる二層構造です。既定オフ、テナント・グループ・ユーザー単位の利用上限、利用状況レポートによる管理が用意されています
  • 金額以外の条件も選択理由になります。GPU搭載PCが既に多数ある環境 や、外部ネットワークに接続できない要件 では、初期投資の計算とは別のところでローカルが選ばれています

そして、これらの数字はすべて前提時点の価格に依存します。半額でのClaude Opus 5公開のように、API価格は動き続けています 。

まず自分(自社)の消費トークン量を測ってください。そのうえで、そのときの価格で計算し直す。この手順であれば、価格が変わっても判断のやり方は変わりません。